リレーの起源と電信装置
Created by Masashi Satoh | 12/09/2025
はじめに
この記事は、本編の「リレーによる加算機回路製作の詳細」を補強するものです。
ここでは、この授業の最後で学ぶインターネット技術の基本的なイメージをもつために、電信技術による情報の伝送に取り組みます。この学びは同時に、これから加算機を構築するために私たちが用いるリレー装置の名称の由来についての学びにもつながるので、たいへんよい学びだと私は考えています。
電信技術

この学びの導入として、私は次のように生徒に話しています。
「ここまででわたしたちは、リレーを使っていろいろな論理装置をつくりました。ところで、リレーって、どうしてリレーという名前がついたんでしょう?」
「リレーと言ったら、駅伝などで、バトンを渡していくあれですよね? こんな不思議な名前がどうしてついたのか。今日はその話をしますね。」
現代ではインターネットや電話などを使って、人々は日々、会話をし、情報を交換して、仕事や生活を豊かにしています。けれども、ひと昔前には、遠く離れた人と会話をする技術はありませんでした。電話が発明される前に広く使われていたのが電信という装置です。
電信の仕組みは簡単で、電源にキーと呼ばれるスイッチをつなぎ、そこから電線を伸ばしていって、情報を届けたい場所に設置したブザー装置につなぐだけです。大地は電気を通す性質をもっているので、電源の片側を銅板などを地面に埋めておけば、1本の電線だけで通信ができるという仕組みでした。
この装置を使って、音の長短の組み合わせに文字を割り当てたモールス符号を送ることで、遠くの相手に即時に情報を届けることができました。
電信におけるリレーの役割
ところが、このやり方にはひとつ問題がありました。銅などを使った電線は確かによく電気を通すのですが、それでもわずかに抵抗があり、長い距離を電気が伝わっていくうちに電力が熱になって逃げていくのです。

もともと50Vの電圧で送り出した信号が、届いたときには半分になってしまい、意図した動作にならないというというようなことが起こりました。そこで発明されたのが、リレーという装置だったのです。
電線の抵抗で電力が完全に失われることのない距離に中継所を置き、そこに電源とリレーを接続して、届いた信号でリレーの電磁石を動作させます。すると、ふたたび元の電圧で同じ信号を送り出すことができるわけです。
信号が中継所から中継所へと手渡されて目的地に届く様子が、リレーという言葉に結びついたというわけです。

電信の実験
このような話をした後、電信装置を実際に作ってみます。いくつかのグループに分かれて作業します。ひとつの島がひとつの中継所となり、長めのケーブルでつないでいきます。教室には地面がありませんから、2本線のケーブルを使います。教室の端から端へと情報を中継していくイメージにグループを配置しましょう。

片側の端にはキーとなるスイッチと電池をつなぎ、反対側の端の局にはブザー回路を形成しておきます。わたしは、シーソー論理素子の学びに使った装置を流用してキースイッチを作っています。ブザーには直前に学んだ負帰還回路を使います。学びがさっそく応用できるという体験は、教育的にもよいものです。
論理回路や加算機の学びと異なり、ここでは回路を深く理解しながら結線を進める必要はありません。あらかじめ結線図を用意しておき、生徒がそれを見ながら結線できるようにしておきます。
それぞれの装置の動作確認ができたら、中継所間をつないで、いよいよ通信を行います。ちょっとものものしく、開所式のような口上を述べてから、生徒にキーを操作させるとよいでしょう。生徒たちの期待が最高潮に達し、各中継所でカチカチという音が起こり、反対側の端でブザー音が聞こえれば実験は成功です。
実験がうまくいったら、簡単なモールス符号を送り、情報がきちんと伝送できることも確認します。SOSなど、単純な符号がよいと思います。(モールス符号のSOS信号はあまりにも有名ですから、いろいろなエピソードを語ることもできるでしょう。)
最後に、あらためて黒板上で、細い電線のなかを長短の電気信号が伝わり、相手に届く様子を確認して、生徒たちのイメージを定着させるとよいでしょう。


おわりに
この学びは、メインレッスンの半分の時間でできる簡単な内容ですが、インターネットの学びの基礎となる電送のイメージを生徒がもつために非常に役立ちます。
逆に言えば、インターネットについての学びのなかで、電信の学びで形成したイメージを先生が意識した上で語ることを心がけることが、よき学びへと生徒たちを導くのです。
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