2023年の夏から2024年9月にかけて上演した第1公演から第5公演まで、会場いっぱいの皆様にお楽しみいただいた作品を、言葉の作品を中心にご紹介します。テキストを味わいながら、あらためて舞台の余韻を楽しんでいただければ幸いです。
言葉の作品
せむしのこびと
お庭に行きましょう。さあ、行こう。
お庭の球根に水あげるの。
せむしのこびとがあらわれて、
大きなくしゃみをひとつした。
大きなくしゃみをひとつした。
お台所へ行きましょう。さあ、行こう。
おいしいスープをつくりましょう。
せむしのこびとがあらわれて、
わたしのおなべを割っちゃった。
わたしのおなべを割っちゃった。
おかゆを食べに行きましょう。
おいしいおかゆを食べましょう。
せむしのこびとがあらわれて、
おかゆを半分食べちゃった。
おかゆを半分食べちゃった。
納屋へ行きましょう。さあ、行こう。
薪を取りに行きましょう。
せむしのこびとがあらわれて、
薪を半分取ってった。
薪を半分取ってった。
地下室へ行きましょう。さあ、行こう。
おいしいジュースを持ってこよう。
せむしのこびとがあらわれて、
わたしのビンを取ってった。
わたしのビンを取ってった。
糸巻きしましょう。さあ、行こう。
糸巻き車を回しましょう。
せむしのこびとがあらわれて、
車をおさえてじゃまをする。
車をおさえてじゃまをする。
お部屋に行きましょう。さあ、行こう、
布団を敷きにいきましょう。
せむしのこびとがあらわれて、
大きな声で笑い出す。
大きな声で笑い出す。
夜のお祈りしようと思って、
お部屋で静かにしていると、
せむしのこびとがあらわれて、
なにやら話しはじめます。
「かわいいお嬢ちゃん、ああ、お願い。
わたしと一緒にお祈りしてね。」
(訳:高久 真弓 ドイツ民謡歌集『少年の魔法の角笛』より)
ウソ 川崎 洋
ウソという鳥がいます
ウソではありません
ホントです
ホントという鳥はいませんが
ウソをつくと
エンマさまに舌を抜かれる
なんてウソ
まっかなウソ
ウソをつかない人はいない
というのはホントであり
ホントだ
というのはえてしてウソであり
冗談のようなホントがあり
涙ながらのウソがあって
なにがホントで
どれがウソやら
そこで私はいつも
水をすくう形に両手のひらを重ね
そっと息を吹きかけるのです
このあたたかさだけは
ウソではない と
自分でうなずくために
*著作権利者の許諾を得て掲載
人というもの(Ecce Homo) ルドルフ・シュタイナー
こころの なかに 織りなす 思い
あたまの なかに 輝く 考え
手足にみなぎる 意志の力
織りなしつつ 輝く
みなぎりつつ 織りなす
輝きつつ 力みなぎる
これが 人
In dem Herzen webet Fühlen,
In dem Haupte leuchtet Denken,
In den Gliedern kraftet Wollen.
Webendes Leuchten,
Kraftendes Weben,
Leuchtendes Ktaften:
Das ist der Mensch
岩崎航 五行詩より
1
呼んでも
呼んでも
答えがないような
真夜中の
悲しみと、話す
2
どんな
微細な光をも
捉える
眼を養うための
くらやみ
3
押し寄せる波を見抜け
この空しさは
おそれは
疑心は
生きた心を沈める怪物
4
胎生期に 既に
この宿命は
刻まれていた
それ 昏きものか
いや 輝くものに
5
太刀を抜け
太刀を抜け
今 太刀を抜け
生命の奥座敷に
据えてあるはず
*著作者の許諾を得て掲載 ©岩崎航
*出典
1、3、5:詩集『震えたのは』
2:詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』
4:エッセイ集『日付の大きいカレンダー』
岩崎 航(いわさき わたる):詩人。
976年生まれ。筋ジストロフィー当事者。詩集『点滴ポール 生き抜くという旗印』『震えたのは』エッセイ集『日付の大きいカレンダー』(いずれもナナロク社)刊行のほか、講演会、連載、書籍への寄稿など活動の場を広げる
水上 古代新頌より 北原白秋
水上は思ふべきかな。
苔清水湧わきしたたり、
日の光透きしたたり、
橿、馬酔木、枝さし蔽ひ、
鏡葉の湯津の真
水上は思ふべきかな。
水上は思ふべきかな。
山の気の神
岩が根の言
かいかがむ荒
荒
水上は思ふべきかな。
水上は思ふべきかな。
雲、狭
丹
白き猪
毛の荒
道 塞ふたぎ寝
水上は思ふべきかな。
水上は思ふべきかな。
清
いやさやに透きしたたり、
神ながら 神 寂
うづの、をを、うづの幣
水上は思ふべきかな。
水上は思ふべきかな。
青
うろくづの堰
たまきはる命の渦
石
水上は思ふべきかな。
音楽と言葉の作品
ハレルヤ
振り付け:R.シュタイナー/音楽:R.ククス
ライアー「日の出の時の朝の礼」 M.トビアッセン
お日さま G.F.スペー
お日さまが 顔を出し くらやみを照らす
銀色にかがやく 朝の光よ
私の心に 小さな火が 灯る
だれにも消せない ともし火となれ
(訳:岡村ふみ)
Wenn Frühe sich entzündet
der silberweise Tag
und klar die Sonn verkündet,
was nachts verborgen lag.
Die Lieb in meinem Herzen
ein Flämmlein zündet an.
Das brennt gleich einer Kerzen,
die niemand löschen kann
アイルランドの旧い子どもの歌より
闇にきらめく おまえの光
どこから来るのか わたしは知らない
近いとも見え 遠いとも見える
お前の名を わたしは知らない
たとえ お前が何であれ
ひかれ ひかれ
小さな 星よ
(岩波少年文庫『モモ』より)
「アリヌーシュカの癒しに基づく変奏曲」より A.ペルト
音楽の作品
G線上のアリア J.S.バッハ
※衣装・フォルムは、ルドルフ・シュタイナーの指示による
パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV825 サラバンド J.S.バッハ
ノクターン 変ロ短調 作品9-1 F.ショパン
※フォルム、衣装、照明はR.シュタイナーの指示による